患者さま
A.I様(72歳/女性) 東大阪市加納在住
職業:自営業(工場内作業)
症状:ひざ痛・変形性膝関節症
ご来院時の症状
10年来のひざ痛で病院にかかっておられたのですが、そちらでは「関節の軟骨が減ってしまっているので、もういい歳ですし正座は出来ないでしょう」と言われていたとのことでした。
ご本人もそういうものだと受け入れ、正座することはもうあきらめておられました。
ただ日常生活において家業を手伝う時のひざの痛みが辛いということ。
また非常に信仰心の厚い方であり、毎月月参りに伏見稲荷大社と高野山、三輪神社へと行かれるそうで、道中の坂道や階段での膝痛が酷くて悩んでおられました( ̄◇ ̄;)
主な症状をまとめると次の通りです。
・右膝のお皿の周囲やひざの関節の内側が、痛い
・坂道や階段などが辛い(特に下りの痛みが著明)
・仕事で長時間立っている時、痛みが増強してくる
・神社やお寺にお参りに行った後は、膝に炎症が起きてスグに水が溜まってしまう
・右膝の拘縮が著明で、屈曲角度はだいたい90度くらいしかない、完全伸展も不能
この方の場合、家業の仕事は立ち仕事がほとんどであるものの、事情が許さないために毎日出勤しトラックの運転などもすることがあるとのこと。
患側が右膝ですのでとっさのブレーキやアクセルの操作に支障があるのではないかと推測され、痛みがあるとか以前に危険ですが自分がやらないと仕事が立ち行かないとのことでした。
(この方の場合、膝の症状が著明であるにも関わらず、家族にもほとんどその辛さを訴えずに我慢と根性で日常生活を過ごされている…という印象でした。)
私の叔母の友人であり、当院の話を聞いて来院されました。
検査結果
問診表に記入していただき、現在の痛みの状態や、特に日常生活を送る上で、 どのようなときにお困りなのかなど、詳しく話を伺いました。
さらに施術の前に身体の歪み、関節の状態などを検査したところ、 次の状態であることが分かりました。
・両側のひざの関節(特に右側が著明)が、拘縮を起こしている。
・初診時の右膝には、軽度ながら膝蓋跳動が診とめられ、普段からすでに水腫がある。
・右膝の屈曲制限が著明であり、、屈曲角度はおおよそ90度くらいでした。
・脚へ走っている神経が出てくる背中の下部〜骨盤に、これもまた著明な関節の可動域減少(いわゆる骨のズレ)を診とめる。
その為に、神経の流れが滞り血行も悪くなって筋肉の疲労が取れにくくなっているようでした。
・腰部〜足部の下半身の緊張が強いのはもちろん、上半身にも緊張が診とめられる。
・これら諸症状のために、身体の歪みは全身におよんでおり回復力の低下、倦怠感の常態化がまた新たな諸症状を生む素因となってきていると思われました。
これら以外にも細かいところも入れるとまだまだ非常に多くの所見がありますが、主なところはこのようなところでした。
膝関節の変形してしまった部分、関節の軟骨が薄くなっている部分などの形状は、残念ながら元には戻りません。
しかしながら、このような場合でも一般的に症状の大幅な改善は充分に期待出来ます!
それはなぜ変形が起こってきたのかという原因をたどっていくことで、次第にハッキリしてきます。
それは膝を支えている筋肉の働きが極端に鈍ってしまった為に、体の重みや衝撃が関節の骨や軟骨などへ大きなストレスとしてダイレクトに伝わり続けているということです。
これが変形が起こってくる直接的な最も大きい要因となります。
またその為に、膝の関節を筋肉がしっかり支えることが出来ていない為に、関節の周囲には容易に炎症が発生してしまって、日常的に水腫が溜まりやすくなります。
更に言うならば、筋肉がちゃんと働けなくて膝の関節を支えられなくなる最も根本的で重大な原因には、やはり骨盤周囲の骨のズレがあります!!!
これらのズレは骨の不整列をつくり、その骨の間から出てくる神経の流れが滞ってしまうと、それら神経が支配する血管や筋肉などの組織の機能が低下してしまいます。
その結果、膝の筋肉が関節を支えられなくなってしまったということです。
つまり、骨のズレを整えてから筋肉の働きが良くなるように緩和操作を施しながら、徐々にではありますが拘縮を起こしている関節の可動域を広げていくための体操やストレッチをしていきます。
そうして骨のズレが直ってきて神経の流れも良くなり、それらに伴い血行が改善して筋肉の疲労が取れ回復力が旺盛になってきたら、その次には筋力アップを図りトレーニングを開始していきます。
最終的には、膝の周囲の関節を支える筋肉がしっかりと働き、関節にある程度の柔軟性と可動域が回復すれば、かなり症状は改善するでしょう。
施術プラン
実際に行った施術内容は、
・骨盤部とそれに続いて全身のゆがみを直すために、調整を順次首の方まで施していきます。
・骨のズレが直ってくると、緊張は効率的に取れやすくなってきます。
このタイミングを逃さずに緊張を取るように下半身を中心とした緩和操作を行い、ご自宅や仕事場などでも体操やストレッチを徐々に行っていただけるように説明指導を行なっていきます。
・ひざの関節の柔軟性と可動域の改善を図るために、ここではまた特別な調整を別に行います。
・これらだけでも改善は充分に見込めるのですが、さらに効果を早く発揮するために氣功三鍼法を施します。
・ひざを支えている筋肉や周囲の組織の機能が回復してきたら、少しずつ正座の練習もしていきます。
一般的に、正座はひざに負担が大きいために症状が出ると正座はしないように指導されることが多いようです。
ただ、痛みや炎症が起きているときに長時間の正座は確かにお勧めできませんが、それらがある程度治まってきたら、すこしくらいの正座はしたほうが関節の柔軟性と機能性を高めるためには非常に効果的であります。
また、東洋医学では古来から「氣が滞ると、血が滞る」といわれます。
ちなみに氣功三鍼法とは、祖は古代中国の哲学者の「老子仙人」を創始者とする「道家氣功」と、やはり古代中国は三国志の時代に活躍した名医である「華陀」を創始者とする「三鍼法」を組み合わせた手法であります。
全身の数多ある経絡のツボの中から任意の3つをチョイスして、そこから全身に氣を流していきます。
またその際には、当院では「てい鍼(しん)」といった棒状の先端が丸くなっている刺さない鍼を使っていきます!
この氣流すことによって、血行の回復が更に早く改善していくのです!!!
経過
1回目: 骨盤部を中心として、全身に調整を施していきます。
ひざなど下半身の関節は体重の負担を大きく受けているために、急激なバランスの変化は一時的にではありますが症状を悪化させるリスクがありますので、ここではまだあえて我慢して焦らずに慎重に調整と緩和操作を行っていきます。
2回目: 今回も、骨盤から調整を進めて上半身まで行います。
同時に、緊張を取るために緩和操作を行います。
体操やストレッチも少しだけ、始めていきます。
今朝は、身体の倦怠感や起床時の不快感など気にならなかったとのことでした。
3回目: 今回も、関節の調整と緊張を取るための緩和操作は、徐々に慎重に進めていきます。
そのかわりに更に効果を早く出すように、気功三鍼法を使い全身に氣を巡らせて神経と血行の流れを改善し促します。
4回目: 骨盤から全身への、骨のズレを調整します。
下半身の緩和操作とストレッチを重点的に施す。
下半身の緊張が徐々に改善されており、歩行時の痛みは半分以下に軽快してきたとのこと。
引き続いて今回も、気功三鍼法により全身に氣を巡らせて回復力の早期改善を促します。
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25回目: 骨盤から全身への調整を健康管理の一環として、週に一度受けておられます。
初診時から5ヵ月くらいになりましたが、最近では長時間の立ち仕事でも、膝に痛みは感じないですし、伏見稲荷大社や高野山にお参りしても大丈夫とのことです。
毎日、入浴時に浴槽に浸かる際に正座の練習をしていただいており、現在は調子が良いときは踵にお尻がついて少し体重を乗せられるようになってきたとのことです。(^ν^)
院長コメント
初診時の状態は、非常に症状や身体の状態をこじらせてしまっていて、当初は調整がなかなか思うように進められませんでした。
しかし、ご本人が治る希望があるなら是非頑張ってみたい!
という決意と覚悟がおありになり、仕事やライフワークのお参りを不安なくこなしたいといった目標がハッキリされていました。
その部分を患者さまであるこの方と我々術者の間で意識の共有が出来ていたことは、施術自体をとてもスムーズに進める上で重要なことでありました(*^^*)
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